日時 : 2023年7月15日(土)
会場 : 聖心女子大学4号館2階4-2教室
■シンポジウム(14:00-17:00) 共催:聖心女子大学グローバル共生研究所
テーマ:ケア関係としての「結婚」の可能性
――伴侶性・異性愛主義から考える
趣 旨:異性愛や性愛に限らない親密性、親子関係とパートナーシップとの繋がりの非自明性など、「結婚」は新たな局面を迎えているように見える。その一方で、「結婚」が叶わない人々からの「結婚」への希求も社会問題として扱われるようになっている。本企画では米国をフィールドにしてポリアモリーの研究を続けてきた深海菊絵氏(日本学術振興会特別研究員RPD)、異性愛中心主義への批判的検討から「結婚の無効化」を論じる志田哲之氏(立教大学)のお二方をお招きする。ケア関係としての結婚はいかなる態様として可能なのか、特に伴侶性および異性愛主義を相対化することで、議論を深めていきたい。
司会:永田夏来(兵庫教育大学)・菅野摂子(埼玉大学)
討論者:野沢慎司(明治学院大学)・池田弘乃(山形大学)
第1報告:志田哲之(立教大学等非常勤講師)
報告題目:多様性時代における結婚を考える
要旨:人権と平等を旗頭に「同性婚」要求の声が高まるにつれて、異性間の結婚離れとのギャップを強く感じるようになったことが本発表の出発点である。
いわゆる「同性婚訴訟」において、地裁から判決文が徐々に原告の主張に寄り添うようになった一方で、2021年実施の「第16回出生動向基本調査」結果では「いずれ結婚するつもり」とする未婚者の減少が示されたことは、このギャップの好例かもしれない。またこの減少は若者の人生計画がシングル設計へと変更されることも予期させる。
つまり結婚「制度」が保障してきた数々の恩恵は、皆婚といわれた時期とは異なり人々に行き渡らないこととなる。「制度」としての結婚は、むしろ人々に不平等さえももたらしているとさえいえる。
皆婚がすでに崩壊した現在、結婚制度によってもたらされていた恩恵はカップル単位ではなく個人単位へと再編成する必要があると、本発表では提起したい。
第2報告:深海菊絵(独立行政法人日本学術振興会 特別研究員(RPD))
報告題目:個人主義とコミットメント
――米国「ソロ・ポリアモリー」のケア関係を事例として
要旨:本発表では、米国のポリアモリー実践者たちが、独自にケア関係を創出していくプロセスに光を当てる。「合意のあるノンモノガミー」の一形態であるポリアモリーでは、婚姻規範に囚われずに自らの生き方を選択することの重要性が強調され、自律的な個人を理想とする傾向がみられる。その一方で、人びとの日常に目を向けると、他者とのコミットメントを重視する態度も観察される。
ポリアモリーにはバリエーションがみられるが、「ソロ・ポリアモリー solo polyamory」にはこの特徴が際立ってみられる。ソロ・ポリアモリストの多くは、パートナーと住居や経済を共有することを望まない。かれらにおいて注目すべきは、モノガミー規範に基づいた伝統的なモデルコースを批判し、自分や自分たちの関係にとっていかなる関係が機能するかという点にフォーカスしている点である。そこで本発表では、ソロ・ポリアモリーの事例を中心的に取り上げながら、ポリアモラスな関係を生きる人びとがいかに他者との関係を創り出しているのか、その過程において何が重視されており、どのようなジレンマが生じているのかを検討する。このような作業は、多様なケア関係に対応した政策を検討する上でも重要である。